わたしたちが考えていること

大牟田へのコミットメント=社会全体や世界へのコミットメント

私たちは福岡県大牟田市に拠点を構え、地域内外の主体との協働を通じて事業を行っています。そこでは何よりもまず、大牟田で暮らし、働く一人ひとりの存在が肯定され、社会的な理由で孤立することなく、多様な選択肢の中でそれぞれの力が発揮され、わくわくする持続的なまちとなることを目指しています。ただ、そのとき私たちは大牟田のことだけを考えているわけではありません。大牟田という地域に日本あるいは近代において共通する社会システムを見出し、「社会システムがどのように変われば、社会全体、世界がよりよいものになっていくのか」ということを考え、変革に向けて具体的に事業を展開し、実践することを強く意識しています。

現場・現実の課題を社会システムの変革で解決する

事業を行うにあたって私たちは、子育て、教育、介護、住宅、アクセシビリティなどにおける社会課題をめぐって採用される「現場の責任を重視した解決策」に限界を感じています。むしろ現場は過剰な(取り得ない)責任を背負わされながら、解決の糸口が見いだせない状況に苦しんでいるのではないでしょうか。社会課題の多くは、現場ではなく、現在の社会システムと現実やビジョンとの齟齬が引き起こしていると私たちは考えます。だからこそ社会システムを変革することが欠かせない。このことは、我々の考え方や行動が社会システムを構成すると同時に、構成された社会システムもまた我々の考え方や行動を規定するという循環を乗り越える必要性を私たちに課しています。

既存の社会システムから独立しながら埋め込まれる主体

社会システムの循環構造を乗り越えるため、私たちは、“既存の社会システムから独立しながら埋め込まれる”主体として、大牟田未来共創センター(ポニポニ)を立ち上げました。大牟田にしっかりと根を下ろした主体でありながら、外部者としての目線や立ち位置を常に持つ「矛盾を抱えた存在」であるからこそ、循環性に抗しながら、変革につながる現実的な実践を展開できると考えています。このことは、展開している各種プロジェクトにおいても同様です。現在の社会システムを支える理念と異なる、新たな理念によるプロジェクトを立ち上げ、既存のシステムにおいて機能させることに取り組んでいます。私たちには矛盾を乗り越えるクリエイティビティが求められています。

パーソンセンタード、エゴ・アイデンティティ、I(わたし)

新たな社会システムの理念を見出すにあたり、大牟田が積み重ねてきた認知症ケアに大きな示唆を得てきました。それは、以前「安心して徘徊できるまち」として表現されていた「パーソンセンタード」な人間観です。私たちは、「誰もが潜在能力を持ち、それは人とのつながりによってはじめて発露するものである」と捉えています。この人間観をケア以外の分野に展開し、理念を深めるために多様な実践者や有識者との対話を重ねてきました。その過程において、そもそも人間存在が個人(パーソン)に閉じておらず、自然(環境)とも融合していること、近代社会が重視してきたセルフ・アイデンティティではなく、エゴ・アイデンティティ、I(わたし)に新たな理念の鍵があると考えています。

存在が肯定され、「温まる」ことで動き出す個人・地域・社会

不安定化する社会構造により、セルフ・アイデンティティが不確かな社会状況において(存在論的不安)、私たちは「エゴ・アイデンティティやI(わたし)≒存在」が肯定され、「温まる」機会や仕組みを地域において保障することが重要になると考えています。その一つとして私たちが注目しているのが対話です。人は、安心できる環境での対話を通じ、思いもよらない言葉が自分の口から飛び出すと、温まり、自ら動き出し、他者や社会に開かれていく(主観的公共性)、と実感しています。私たちは、存在が「温まる」機会には多くのバリエーションがあり、存在の肯定があるからこそ、役割(≒セルフ・アイデンティティ)を自由に選択できる、変化を恐れない地域・社会が実現すると考えています。

問いを立て、対話を通して新たな理念を見出す

現在の社会システムの理念を見出し、新たな理念を構想するために、私たちは既存の書籍や事例から答えを探すのではなく、自分たちで問いを立てることを大事にしています。そして、私たちが現実的に向き合っている事柄を中心に、それぞれのテーマにおいて考えを深めている先進的な有識者との対話を重視しています。対話という有識者にとっても自由で気づきある機会を作ることで、生きた言葉で、私たちの主体性がしっかりと維持された形で、理念を見出し、それを自分たちのものにしていくことができると考えています。同時に、対話を地域内外の人たちと積極的に共有することにより、理念に公共性を持たせ、連帯できる仲間を得たいと考えています。

政策形成にコミットし、統合的な政策を展開する

私たちは行政(大牟田市)と協働し、統合的な政策形成や展開にコミットしています。それは、まず、政策が社会システムにおける一定の枠組みを構成しているため、コミットすることが変革に有用だと考えているからです。そして、市(基礎自治体)による政策の多くが省庁ごとに縦割りとなっている政策体系を引き継いでいるため、元来統合的である人や生活に合わない形となり、その結果として狭間の問題を生んでいると考えているからです。これも社会システムと現実やビジョンとの齟齬です。そこで、私たちは行政内の複数の部署と協働することで、統合的な課題設定を行い、既存の政策体系(領域)を横断する政策展開の実現を目指しています。

新たな理念を体現するプロジェクト・コレクティブインパクトの推進

取り組んでいる個別的なプロジェクトは、既存の社会システムで機能することを前提とした新たな理念を体現するもの(プロトタイプ)であり、また、協働するネットワークを形成する機会でもあります。具体的には、行政(大牟田市)の各部署、地域の業界団体、事業者(所)、教育研究機関、地域外の企業などとの積極的な協働を進めています。これは、行政が人材や財政的な制約を強く受けるなか、統合的なアジェンダを設定し、戦略を立て、協働において社会(地域)課題の解決、ビジョンの実現を図るという意味で、コレクティブインパクトを志向しているということができます。今後、未来予測、指標の構築、モニタリング等の役割を果たしていくことが私たちの課題です。

リビングラボによる企業の新サービス・新規事業開発と地域の新たな資金調達

地域と企業との協働を推進する際、私たちが活用しているアプローチがリビングラボです。地域課題を題材とし、新たな理念や統合的なアジェンダ・戦略を手がかりに企業の新サービス・新規事業開発に取り組んでいます。日本におけるリビングラボは、地域の実りが少ない実証実験の誘致、一時的なワークショップの開催にとどまり、言語的なコミュニケーションに偏っていることが少なくありません。それを乗り越えるため、私たちは協働的で実践的なプロジェクトを組成し、日常的に生活者と関わっている福祉関係者の参加を得て進めてきました。また、リビングラボが生み出す資金を行政予算が配分されづらい狭間の問題に取り組むための原資として活用することを常に志向しています。

未来予測・インキュベーション・市民との協働機会の創出

私たちは今後、未来予測、インキュベーション、そして幅広い市民との協働機会の創出に取り組む必要があります。未来予測は、社会システムを政策的経緯、つまり、過去からの積み重ねによる構造で把握するだけではなく、未来の状況を踏まえたものとして捉えることを目的としています。インキュベーションは、地域における新たな課題解決・価値創出主体を生み出し、働く場を創出し、新しい技術や働き方(生き方)を子どもたちや若者に示すために欠かせないと考えています。加えて、広い市民との協働機会の創出が、一人ひとりの市民が新たな社会システムを作り(変革し)続けていくことの主役となり、「社会は変えられる」という文化を醸成するために必要だと捉えています。

わたしたちが考えていること(2019年4月)