ポニポニピープル Dialogue 002 鶴岡章吾
(3/7)ポニポニとの合流
菊地玄摩 これが、ポニポニと一緒にやることになったきっかけですね。
鶴岡章吾 はい。その時は、菅原さん以外のメンバーは知らなかったので、梅本さんとも初対面でした。菅原さん以外のポ二ポ二のメンバーとは面識がない状態でしたね。
菊地玄摩 菅原さんは、ポニポニの話をしなかったのですか。
鶴岡章吾 しなかったですね。
菊地玄摩 それはそれで意外ですね。
鶴岡章吾 菅原さんは、ポ二ポ二を紹介したら僕たちがそっちにいきそうだと思ったのかも知れませんね。
菊地玄摩 菅原さんがちゃんと分けていたのに、僕が繋げてしまったのですね。
鶴岡章吾 そうですね。知らず知らずのうちに菅原さんを介して、ポニポニの考え方を吸収していたわけです。
菊地玄摩 それで、デジタル付箋の資料を見ただけで、話が早かったと。なるほど。
鶴岡章吾 その資料には、すごく興味を引かれましたよ。その時に見たのは、まだ一部分でしかなかったので、その後菅原さんにお願いして、ポニポニのミーティングに参加させてもらうようになりました。
菊地玄摩 その時、「せっかく分けてたのに」と菅原さんは言ってませんでしたか。
鶴岡章吾 言ってました。
菊地玄摩
菅原さんに謝らないといけませんね。どおりでうまく行き過ぎていたわけです。
その後の「にんげんフェスティバル」の制作の思い出を紹介していただけますか。
鶴岡章吾 はい。それまでは、僕がディレクター兼デザイナーとして仕事をすることが多く、「にんげんフェスティバル」のように菊地さんが単独のディレクターをしている取り組みは、結構なチャレンジでした。今までは、好き勝手できる自分の枠組みに収まることばかりでしたが、そこを菊地さんにコントロールしていただいたわけです。これこそ、僕が福岡市内でやりたかったことで、今までのスキルをもう一度見直して、勉強できたという達成感がありましたね。
菊地玄摩 なるほど。これは目新しい、と感じたポイントはありましたか。
鶴岡章吾 グリッドシステムですよ。今回はたまたま使っただけかもしれませんが、僕の中では、アカデミックで勉強したいと思っていたジャンルでした。ロジカルなデザイン手法です。今までのお客さんとの仕事では、こうした話はほとんどなく、「この色を目立つように赤くしてください」とか、「もっと見えるように大きくしてください」といった話ばかりでしたね。
菊地玄摩 お客さんが、「グリッドはどうなっている?」とは聞きませんもんね。
鶴岡章吾 そういう話はありませんね。もちろん私なりに、この色は周りの色と調和があって、といった具合にロジックを説明します。「にんげんフェスティバル」の時には、グリッドシステムや色、表現の話をしながら、よりグラフィックを突き詰めることができた実感があり、僕の中では新しい体験でした。田舎や地方だと、あまりこうした話になりませんね。
菊地玄摩 今のお話は、チームで企画を実行するときに、チーム間で共有する部分を言葉にしたり、数値を揃えたり、あるルールの中で展開したり、という類のことですよね。
鶴岡章吾 そうです。それまでは、チームでグラフィックの仕事をすることはありませんでした。下河さんと二人ですることはありますが、基本的にグラフィックの部分をチームですることはなく、一人でしていました。チーム内での僕の役割、僕の考えをどう伝えるのか、相手の発言をどう組み取るのか、僕も企画の内容に意見をするなど、こうした「にんげんフェスティバル」でのチームワークは、今までになく珍しいものでした。
菊地玄摩 大牟田で活動している人の中でも、今言っていただいたようなチームワークができる人たちとやりたいと思っていました。「なぜこれをやるのか」「どういう状態を作ろうとしているのか」を共有して、それならこういうアウトプットにしようという議論ができる関係性がないと、もっと太くしてくださいとか、細くしてくださいとか、赤くしてくださいといった話ばかりになってしまいます。それだと楽しくないので。鶴岡さんは「にんげんフェスティバル」という文脈にすごくスムーズに入って来てくれました。それが、普段通りなんだろうなとは感じていましたが。
鶴岡章吾 すごく刺激的でした。今までは、お客さんと僕の立場の違いを大きく感じていましたが、「にんげんフェスティバル」では、皆さんとの対話でチームだなと感じていたので、すごく新鮮でしたね。
菊地玄摩 ポニポニでは、明確なクライアントがいて、その想いを形にするというやり方ではないですよね。あの一見すると謎なデジタル付箋の資料に、関心を持ち、鶴岡さんなりのやり方で関わってくれたことはやはりポイントだと思います。ある人が答えや目的を持ってるわけではなく、まだ形の決まっていない「それ」に向かって、チームが揃って仕事をしている感じです。
鶴岡章吾 こういうチームが理想ですね。僕は「攻殻機動隊」がすごく好きで、主人公たちが所属している「9課」のチームワークが理想的ですよ。草薙素子というリーダーがいるものの、所属してる人たちがそれぞれのやり方や考え方で行動して、一つの目的を達成していきます。一人一人が駒として動かされているわけではなく、一人の人間としてやるべきことをしている。そんな上から指示されて、やらされているわけではない関係性の仲間が欲しいと思っていました。こういう空気感をポニポニには感じます。それぞれのフィールドから考え方を出し合って、それを否定し合うようなことも起こりません。すごくいいな、理想的だなと思いました。
菊地玄摩 「にんげんフェスティバル」をやるときも筋が見えないので、「攻殻機動隊」的な状況かも知れません。
鶴岡章吾 そうですね。僕なりの「にんげんフェスティバル」のあるべき姿や目標がありつつ、各人ごとにも目標とそれに向けた課題がある感じがしました。
菊地玄摩 「にんげんフェスティバル」は、よくこんなことができるなと思いつつ、僕も楽しめました。デザインチームに岩倉さんが撮影で加わってくれたことで、さらに面白くなりましたね。このチームが、次はどうなるんだろうという期待感があります。