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にんげんフェスティバル 2022
IdentitieS 〜わたしの行方

にんげんフェスティバル2022では、全体を貫くテーマとして、「IdentitieS 〜わたしの行方」を掲げています。その理由は、これまでポニポニが大牟田で取り組んできた様々なプロジェクトにおいて、何度もアイデンティティをめぐる問いが現れ、それらに向き合うことが地域や社会の未来を思い描くことにつながると感じたことにあります。ポニポニが直面したアイデンディティをめぐる問いを手がかりとして、多くの人たちと意見を交わし、未来に向けた「わたしの行方」を一緒に考えたいと思っています。

大牟田からの投げかける問いが意味するところ

アイデンティティは「わたし」と他者、場所、自然、社会との間に形成される「にんげんの輪郭」ということができます。そう捉えると、アイデンティティをめぐる問いに向き合い、「わたしの行方」について考えることは、にんげんと社会のあり方を再考し、展望する機会になるのではないでしょうか。それは日本においてのみならず、高齢化や都市化が進む世界全体に共通する普遍的な問いへと深めることもできるかもしれません。ぜひ一人でも多くの方にフェスティバルへご参加いただき、一緒に考える機会を得られたら嬉しいです。12月2・3・4日、大牟田でお待ちしています。

Theme 1 テクノロジーとわたし

人工知能(AI)・ロボット

人工知能は、従来の機械化・工場化とは異なる意味で、私たちから仕事を奪うだろうか。人工知能は、私たちの代わりに合理的に決断し、いつか民主主義をも乗り越えてしまうのだろうか。人工知能を搭載したロボットが私たちの身近な存在になったとき、ロボットは私たちの友人となっているだろうか。人工知能やロボットにもアイデンティティは宿るのだろうか。

人間拡張・メタバース

技術の進歩は、私たちの能力をどれくらい拡張したのだろうか。それとも退化させたのだろうか。仮想世界における肉体なき私と現実世界における肉体的な私は、どう折り合いをつけるのだろうか。仮想世界が私たちの暮らしの中心となったとき、肉体的な他者や自然との関わりは、どう位置づくだろうか。

IoT、センシング技術

センシング技術と人工知能(AI)が私たちに突きつけるデータや判断は、私たちに自由や豊かさ(Well-being)をもたらすだろうか。センサーが予測する未来に私たちは抗することができるだろうか。あらゆる情報がセンシングされ、AIにより予測される未来に、私たちはどのように抗すればよいのだろうか。

疾病の予兆を検知することの意味を検討したプロジェクト(2020-2021)

ポニポニが企業とともにIoTセンサーと人工知能(AI)によって疾病の予兆を検知することの意味を検討したプロジェクトでは、センサーによって初めて明かされた「わたし」の状況やアルゴリズムが予測する“なるかもしれない”病気の告知が、今の「わたし」に不安や戸惑いをもたらすことが大きなテーマとなりました。今後、IoTセンサー、人工知能のみならず、ロボットやVRなど進化し続ける数多くのテクノロジーとの共存が避けられないなかで、テクノロジーと「わたし」とのよりよい関係について考えたいと思っています。

Theme 2 心身とわたし

老い

老いをめぐるアイデンティティの揺らぎを和らげるにはどうすればよいのだろうか。若さを追い求めることと死を受け入れることが拮抗する状況のなかで、私たちはどのように生きていけばよいだろうか。老いが難しくする「理性的で自律的な人間」とは別のあり方を、私たちは見つけることができるだろうか。

病い

医療が「疾患(disease)」と「病い(illness)」の両方に向き合うにはどうすればいいだろうか。疾患を予測して予防する医療への参加を求められる私たちは、病いへの不安を語る術を持ち合わせているだろうか。疾病の根治が追求されるなかで、それでも失われる身体や時間、先天的な障害との折り合いをどのようにつけていけばよいのだろうか。

障害

障害の認定に基づく保障とそのレッテルによる差別のジレンマを、私たちはどう乗り越えていけばいいのだろうか。身近にいる多様なロールモデルの存在は、アイデンティティにどんな示唆があるだろうか。「多様性」が尊ばれる社会において、いかに私たちは、他者の主観的な経験を主観的に共有することができるだろうか。

介護予防やフレイル予防のプロジェクト(2018-)

介護予防やフレイル予防のプロジェクトでは、退職や病気などによって失われた社会的役割やつながりを再構築することがテーマとなっています。そこでは、「新たに何かを始めたい」「誰かとつながりたい」という意欲が鍵となり、それを実現する誰もが参加できる社会の実現が必要となっています。私たちは、「わたし」を形づくる意欲の源となるアイデンティティの深層やそれがアクティブになるメカニズム、さらに社会システムをアップデートするような「わたし」と老い、病い、障害との新たな関係のあり方を探り当てたいと思っています。

Theme 3 場所とわたし

故郷(ふるさと)

アイデンティティの一部であった先祖や自然への畏怖のような「時空を超えたつながり」を、私たちはどのような形で回復していくのだろうか。自然(土地)を対象として把握するのではなく、それらとの一体感を身体的な共感覚において呼び起こすにはどうすればよいだろうか。自分の居場所が見いだされる「ここはわたしだ」という感覚を、新たな土地や場所で得るにはどうすればいいだろうか。

リロケーションダメージ

高齢になって住み慣れた場所から転居する際に、無意識において被るリロケーションダメージやアイデンティティクライシスを、どうすれば予防(軽減)できるだろうか。存在論的不安やアイデンティティクライシスに対して、対話はどのように有用なのだろうか。誰かの中でわたしが生き続けるという感覚は、アイデンティティにどんな示唆をもたらすだろうか。

スマートシティ、スマートホーム

情報化され、人工知能(AI)によってマネジメントされるスマートシティ・スマートホームに、私たちは親しみを感じることができるだろうか。プライバシーが重視される現代社会において、住みこなすことで共用空間が立ち現れるには、どうすればいいだろうか。自然の循環や能動性に開かれた世界との関わりを、都市や住まいにおいて、私たちはどう取り戻せばよいだろうか。

老朽化した市営住宅の建て替えに向き合う住まいのプロジェクト(2019-)

住まいのプロジェクトで向き合っている老朽化した市営住宅の建て替えでは、本人の意思とは関係のない社会的な住み替えが求められます。同様のことは、施設への入居など、特に高齢期において少なくありません。そのとき起きるリロケーションダメージは、「わたし」と場所との間で共有されていたアイデンティティが毀損した状況だと捉えられると考えています。私たちは、このことを予防し、ダメージを軽減する方策、“スマート化”が進む住まいや街といった場所と「わたし」とのよりよい関係についてヒントを見出したいと思っています。