ポニポニピープル Dialogue 003 菊地玄摩

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大牟田で起こっていること

鶴岡章吾 今、継続的に作ってきたサイトの全体的な見直しに入っているような状況だと思います。今後のポニポニとの関係性や運営について、何かありますか?

菊地玄摩 2021年に原口さんからメールをもらってからいろいろなサイトやイベントを作りましたが、3年がかりで、当初思い描いていた広がりがおおよそ揃った状態になりました。ひとつひとつは、先ほど話したようなやり方で作られているのですが、このやり方でできるのはここまでだなという感じがしています。一方で最初の年度に挫折した、ポニポニ自体の持ってる独自の論理そのものを表現する、それに形を与えていくことが、チャレンジとして残っています。今の段階では大牟田に行かないと分からない、人から人にしか伝わらないものが多くあるということで、それをなんとか変えていきたいです。
ポニポニと、個人的に関わっている他のプロジェクトとのあいだに同時代性を感じることがあるのですが、儲けることや、サービスを使ってもらうというような企業の論理を超えて、社会の一員としてどう振る舞うかという場面で、企業単体ではできなかったり、複数の企業が協同しないと意味をなさなかったり、教育や行政が絡んできたりということって、たくさんあるんですよね。その点で、大牟田でポニポニが経験してきたことが、他の地域でも起こり得ることを先取りしていることがたくさんあると思います。同時代性がある直感があるんですよね。だからこそポニポニがこういう考えでここまできた、ということを見せることには、すごく価値があると思います。僕自身すごく興味がありますし、今はアルス・エレクトロニカよりもそちらに興味がある。
ポニポニは「私達はこうやってるよ」と見せてると思うんですけど、どういう表現に乗せればコミュニケーションできるのか、まだよいものが見つかっていない。あまり語られてなかったり、見えないから、僕はそれを見えるようにしたいです。それを似たような状況に置かれている人たちに届けることができると、大きな助けになると思っていて、やりがいを感じています。鶴岡さんも面白いと思ってもらえるところは、これからも一緒にやってもらえたらいいなって思ってます。

鶴岡章吾 ぜひぜひ。僕のお客さんの中でも、会社が経済活動だけではなく地域や人に焦点を当てていく方針になってきて、働いてる方たちが変化に戸惑っていたりすることがあります。そういった方向性に順応していくために、どこから手つければいいのか。自分の考え方を変えないといけないのですが、変えないといけないということ自体に追いつけない人たちも多い。そんな方たちこそ、ポニポニがやっている「湯リイカ」などのコンテンツにちょっと触れるだけで、価値観や考え方の試行錯誤をはじめるきっかけになるんじゃないかなと思います。
話すハードルが高いことや、対話相手と結びつくことができない状況をサポートできるような媒体があると、そういった人たちにとってもすごく大きい存在になりますよね。みなさん、アンテナを張ることはしていると思います。「こういう取り組みを見つけたんです」という話は上がるんですけど、それがその人たちにマッチしているのか、そもそもその考え方の前段階で気づく機会があった方がいいんじゃないかなど、ベースになるところをポニポニがやっている気がするんです。そこに、サイトで触れられるとすごくいいなと思うんですよね。

菊地玄摩 本当にそうですね。鶴岡さんの仕事ぶりから感じているのは、目に見える成果としてはグラフィックや印刷物なのですが、それを形にするまでのコミュニケーションや人を巻き込むところの手厚さです。鶴岡さんの活動してる空間が、僕が関わることができている範囲よりも広い感じがするんですよね、開かれてる感じがする。
僕の職能はウェブ制作屋で、当然ですが普通はウェブを作ることに特化した人として扱われます。そこにポニポニが取り組むようなことを相談しようという人は残念ながら多くありません。でも僕個人は社会の一員としていろんなことを感じていて、その自然な感覚に対して、職能のイメージの狭さには息苦さを感じることがあります。鶴岡さんは職能を超えるレイヤまで軽やかに移動しながらやってるように見えて、羨ましいなって思います。

鶴岡章吾 もう、日々苦しんでます。

菊地玄摩 大変ですよね笑。でも僕は原口さんに見つけてもらったことで、ポニポニでこういうことをさせてもらえていて、非常に自分に合ってるなと思います。大牟田のこの状況からできそうなことに、すごく期待してもいます。もう大牟田でやってますよ、といろんな場所にいる人たちに見せられるものを作りたいというか。そこはすごく期待してるんですよね。

鶴岡章吾 僕も大牟田に住んでいて、やっぱり息苦しいなと思う部分もあるんですけど、そんな中でポニポニが活動できているように、寛容な部分もある。市内にいるとなかなか気づけない部分もあるんです。外からの視点を聞いて、大牟田市は面白い地域性なんだろうなと思いました。ポニポニと一緒に活動をし始めて、僕自身の興味関心が事業を立ち上げた頃とは全然違う方向に向いてるんだろうなという気がします。

菊地玄摩 そのあたりを掘っていくと、それ自体が新しいかも知れませんね。さっきポニポニを表現しなきゃと言いましたけど、いかに大牟田が面白いか、可能性があるかって、ポニポニが体現することで感じられることでもあるし、ポニポニとは特に関わりのない大牟田のことだったりもするじゃないですか。だから大牟田の出来事が紹介されて、他の地域の人がそれを見てここは真似できそうだ、となればそれだけで価値がある。大牟田と似た取り組みを始めたい時に、なぜ大牟田はできたんですかという話に答えるものって、もしかしたら新しいサイトが必要なのかも知れないですね。

鶴岡章吾 ポニポニのフィルターを通して大牟田を表現していくのは面白そうです。今までとまた全然違う大牟田が見えてきそうで。

菊地玄摩 ポニポニと大牟田は不可分ですよね。大牟田の状況があるからポニポニはそれに対して何かができるし、一方でポニポニは大牟田の一部でもある。その関係が見えると、今日鶴岡さんと話したような期待が表現できそうです。キリがなさそうなので、終わりましょうか?

鶴岡章吾 今度はじっくり飲みながら話しましょう。

菊地玄摩 そうしましょう。今日はありがとうございました。

鶴岡章吾 ありがとうございました。

おわりに

鶴岡章吾 今までさまざまな方々と出会い、いろんなモノやコトを共有してきましたが、私にとって菊地さんとの出会いはその共有するという体験そのものを今までとは違う角度で実感し、深く考えるきっかけとなりました。
効率化や結果のみが求められがちな現代社会の中で、『造形的な冒険』や『未解決のまま置いてある』など、菊地さんの言葉からはプロセスに楽しんでいるワクワクするワードがたくさん出てきます。仕事という枠組みを超えて一人の人間として社会とどう関わり、共に歩んで行くのか。そんな事を体現している菊地さんとポニポニの関係性が大牟田という地域で広がり、私をはじめたくさんに人たちに共有されていくことにワクワクを感じるインタビューとなりました。

菊地玄摩

Circuit Lab. (ユニバ株式会社)
ポニポニピープル Dialogue 003 菊地玄摩 ポニポニピープル Dialogue 002 鶴岡章吾 にんげんフェスティバル 2022 - IdentitieS 〜わたしの行方

鶴岡章吾

株式会社シロノマ
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