ポニポニピープル Dialogue 003 菊地玄摩

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「にんげんフェスティバル」が始まる

鶴岡章吾 2022年度には「にんげんフェスティバル」の制作に入っていきましたね。進めかたがわかったらすぐに、というような形で。

にんげんフェスティバル

菊地玄摩 そうですね。「にんげんフェスティバル」が開催されたのは2022年12月でしたけど、当初は夏に実施する予定でしたから2022年4月の時点で取り組みが始まっていました。ようやくリリースしたサイトも育てたいんですが、「にんげんフェスティバル」のために新しいヴィジュアル言語を開発しなくてはいけない状況にありました。しかし弱い仮説をじっくり育てるための空間を作ることが難しいのは、前年度にわかっていました。残り期間を考えるとハードルの高い分量で、非常に苦しい状況でしたね。議論に乗るところまで造形を一緒に育てられるパートナーがほしくて、鶴岡さんに連絡しましたね。

鶴岡章吾 菊地さんからいただいた最初のメールを見返したのですが、「まだプロジェクトの全体が固まっておらず具体的なオファーができる状態ではないのですが、ポニポニの活動を面白がっていただけるのか、お話できると嬉しいです。」と書いてあります。

菊地玄摩 正直な気持ちですね。

鶴岡章吾 何を話したらいいんだろうとは思いましたけど、僕もやっぱり面白さやわくわく感を感じながら返信した覚えがあります。

菊地玄摩 すぐにポジティブな内容で返信いただけて、しかもすぐ大牟田で会えそうだということで、とても気持ちが楽になりました。面白そうですね、そのうち会いましょう、というような展開だったらどうしようと思ってたんですけど、救われた心地でした。しかも、お会いしてすぐに、こういうサイトを揃えていくとこういうコミュニケーションになるんじゃないか、という全体像の話で盛り上がれたんですよね。ポニポニピープルの鶴岡さんの回でも話題になった図に、ポジティブなリアクションをもらえたと感じました。

鶴岡章吾 そうですね。私の仕事はアナログな手法を用いて対話したり、コミュニティを作ったりすることが多いのですが、ウェブサイトなどのデジタルでも同じような思考があるんだと納得できたところがありました。

菊地玄摩 鶴岡さんが図を通して理解してくれたのがわかって、これは助かるかも知れない…と暗闇に光が差し込んだ気持ちがしましたね。

鶴岡章吾 よかったです。

菊地玄摩 「にんげんフェスティバル」、というタイトルはそのときお伝えしていたんでしたっけ。

鶴岡章吾 そうですね。あの時は、まだ決まりではないけど「『にんげんフェスティバル』という名前でいこうと思っています」という話を伺いました。

菊地玄摩 そうでした。他のポニポニメンバーはもう少し考えたいと言っていた時期だったと思いますが、言い出した僕としてはよい名前だなと思っていたんです。どうなるかわからない状況でしたが、僕が思っている一番良い部分からお伝えして、一緒にやりましょうと話さないと、鶴岡さんも困るだろうと思っていました。「にんげんフェスティバル」というワードで領域を立てて、「にんげんフェスティバル」だからこうじゃないか、と中身を作っていく構図です。どういうウェブで、どういうビジュアルで、という作業を進める余地を作りたい一心でした。
そういう感じで、僕の仕事の大部分は、「にんげんフェスティバル」のヴィジュアルやウェブサイトそのものよりも、それらの設定の提案だったのかも知れません。フェスティバルと言うからには、多くの方に自分と関係があるかも知れない、と心の底から感じてもらえるポテンシャルを作りたかった。自分には関係ないな、と思われたらフェスティバルにならないというか。「にんげん」というワードを出すことで、自分は人間だという意識があれば自動的に関係してしまう、そういうふうに主催者側の思考と表現の出発点を一致させることで、半分僕の仕事が終わったというか、それで精いっぱいという感じです。ビジュアルとサイトも作るんですが、それは事前に作った空間で遊んでいるようなものです。
そういえば「湯リイカ」のサイトを作りましょうという話も、最初は僕が言いました。もともと「湯リイカ」はYouTubeで展開した動画シリーズのタイトルだったので、サイトの名前に流用するのは変だなあ、という雰囲気があったのを覚えています。現在「湯リイカ」と呼ばれている領域は当時「対話」と呼ばれていたのですが、それでは受け手に伝わらないと思っていたので、何かテーマを立てて話すための場を「湯リイカ」、そこに登場する人たちを「ふろとも」と読み替えて提示することを提案しました。動画シリーズの名前をお借りして、領域名に転用したということです。

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