ポニポニピープル Dialogue 004 大庭早子

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パジャマパーティー

菊地玄摩 今後についてはどうでしょうか?何かやりたいことはありますか。

大庭早子 パジャマパーティーですね。

菊地玄摩 パジャマパーティー?笑

大庭早子 うずうずマインに1回泊まってみたいなと思って。笑
こんなに良い立地だし、1階で牡蠣小屋みたいにバーベキューをするとか。

菊地玄摩 泊まるという行為をあえて作るということだと思いますが、どんなイメージでしょう?

大庭早子 こんな街のど真ん中に泊まれたら面白いなと思っていて。解体現場で寝るみたいなイメージでしょうか。ビジネスホテルにはないようなパノラマビューがあって、ここでお喋りするというのも面白いかなと。住居学科だったということもあって、暮らしに対する興味が強いんですね。だから、うずうずマインをやったとしても、どこかで暮らしにリンクしていて欲しいなと考えた時に、何日間だけでも泊まれたり、合宿的に一晩かけてうずうずマインを今後どうしたいか修学旅行みたいに話せたら楽しいだろうなと。別に自分のパジャマを自慢したいわけじゃないので、実際にパジャマじゃなくていいです。笑

菊地玄摩 山の中でテントで寝る場合は星空が綺麗だねとなりそうですけど、うずうずマインの場合は星空ではなく夜の大牟田駅前を感じながら寝ることになりそうです。

大庭早子 そうですね、そこで語らうことができても良いかなと思ってます。
それから、建物が完成すると内覧会をやると思うんですけど、うずうずマインはやっていないのでみんなで内覧会的なことをやったり、屋上も全然使っていないので活用してみたりできたら良いなと思います。
ポニポニ以外の大牟田の方と繋がりができていないので、大牟田の空き家と繋がっていけたら良いなとも思っています。

菊地玄摩 当初はスペシャリストとしてオファーを受けたと思うのですが、今はポニポニの幹事になられていますね。

大庭早子 1階や3階の使い方の相談役として、建築に関わることだったら相談に乗りますよという立場ですね。本来の幹事という立場とは違うかも知れないですけど。お話を4月にいただいて、イベントとかを色々考えましょうと会議を始めているタイミングです。

菊地玄摩 分解工事のコンセプトで、まだやりたいことがあるような印象ですが、それについてはどうでしょう。

大庭早子 街の一角で急に解体されてしまうと、そこに何が建っていたか分からなくなってしまうことってよくあるんですよね。建物を建てた時には上棟式があって、完成したことを祝うと思うんですけど、解体する時も、お見送りのお祝い的なことができたら良いなと思いますね。

菊地玄摩 解体になる瞬間なのか分解の途中なのか分かりませんが、お祝いがあれば、参加したいです。

大庭早子 何が一番良いんだろうって考えていますね。笑って見送ってあげたいので、それをどう企画するかを考えていきたいなと思っています。分解したパーツを持って帰ることもできそうですよね。みんなが少しずつ持ち帰って、解体費用が少し安くなるとか。植物を持ち帰る方法もあるかも知れないです。

菊地玄摩 「ポニポニ」に関連して何かありますか?

大庭早子 「ポニポニ」という響きの印象としてはすごく柔らかい印象でした。全部が丸でも全部がまっすぐなわけでもない「ポニポニ物質」の印象も強かったので、建築の方でもその要素を取り込みました。3階の机は、ポニポニ物質のぶつかってちょっと平らなところを使って、不思議な連結ができるテーブルの形になっています。あれは、ポニポニ物質から引っ張ってきています。ただ丸で連結していると一点でしか交わらないけど、丸いところもまっすぐなところも両方ある、不思議な芋虫みたいな連結ができるようにデザインしました。それから、ドアノブのカーブもポニポニの柔らかい感じを表現したくて、選びました。「ポニポニ物質」はああいう不思議な、触り心地の良さそうな見た目をしているので、触ってみたい感じがあったので、実際触れるようにしたいと思ってました。

菊地玄摩 ポニポニ物質の提案者としては嬉しいですね。うずうずマインに限らず、どんどん実空間にそういうものを忍ばせていきたいですね。僕はウェブをやっていて、大庭さんからインスピレーションを受けていますが、もっと直接的に物質版とウェブ版の両面性があるような造形をやっていけたらいいなと思いました。今日はありがとうございました。

大庭早子 ありがとうございました。

おわりに

菊地玄摩 大庭さんが大牟田に来た日、横にいた私は、予算の限度やスケジュールについての仮定の話が出る度に、原口さんが頑として?それに答えないのを聞いていました。これは大変そうだ、ただでさえコンセプトの飛躍が必要な場面なのに、物理面の制約まで曖昧になってしまったら雲をつかむような話になってしまう。せめて私はコンセプト面で手助けになるような動きをしなければならない…と思ったのを覚えています。
しかしその後に私が見たものは、分解工事というコンセプトが立ち上がり、実際にビルの壁が外され、穴が空くところまで大庭さんが力強く引っ張る姿でした。組み立てることについて知り尽くした人は、その手順を裏返すことさえ可能なんだと驚くことになりました。
ところで私は美術大学の受験生だった頃に、紙を使った立体構成の課題に取り組んだことがあるのですが、概して苦手で、どうしても「こんな形を作りたい」と思うことに先立って「自分の技量でも破綻なく作れる」ことに気持ちが持って行かれてしまい、それがまた作業をつまらなくする悪循環に陥っていました。デッサンは下手でも楽しく取り組めたのですが…。
ビルの改修プロジェクトは私にとって苦手な立体構成の巨大版のようです。私はその不安から、あの初日の原口さんのムーブに対して受験生のときのように反応してしまっていました。しかしあれは大庭さんの飛躍の力を制約してしまう予定調和を回避するための、懸命な抵抗だったのではないかと思えるようになりました。

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