ポニポニピープル Dialogue 007 浦川一浩
(4/6)VRプロジェクト
鶴岡章吾 そしてVR事業ですが、印象に残ったエピソードはありますか?
浦川一浩 延寿苑の利用者さんにVR映像を見せに行ったときなんですが、私がお話した方は当時108歳の方でした。108歳の人がVRゴーグルを装着してくれるのか?と一抹の不安がありましたが、その方は躊躇なく装着され、私の勝手な先入観が覆されました。たまたまその方が住んでいたところに近い映像だったので、それを見て20歳頃の思い出話をされました。108歳なので約90年前の話なんですが、首を自然に上下左右させて映像を見られて、「ここの角を曲がると自分が勤めていた病院があったんだ。そこは今どうなっているのかな?懐かしいね……あんた次はもっと撮影してくれんね」みたいな話をしてくれました。108歳の人がいまだに興味関心を持つことがあるのか?と衝撃を受けました。高齢であっても興味関心があれば、リハビリでは動かない身体が自然と動くし、会話もできるんだと、信じられない場面に遭遇できました。
鶴岡章吾 108歳の方がVRゴーグルを装着して、映像を見て昔話をするなんてなかなか想像できないですよね。
浦川一浩 そうなんですよ。自分もでしたが、みな何歳だからという固定観念を持っていると思うんです。でも興味関心のきっかけを作り、対話することで、何歳であっても人の潜在能力、可能性を引き出すことができるということに気づかされました。この方は今年お亡くなりになったのですが、映像を見せることができたことは心に残っているし、改めてこのプロジェクトの意味を学ばさせてもらったと、この出会いに感謝しています。
鶴岡章吾 プロジェクトを進める中での気づきや学びは、重要ですね。
浦川一浩 そうですね。このプロジェクトは、各回3時間の事業が終わったあとにふりかえりを1時間くらいやっていたので、そこでの気づきや反省点もみんなで共有していました。準備含めると合計4時間以上ですよ… 笑。
鶴岡章吾 プロジェクトを通して、みんなで一緒に考え、気づき、学び合う、いいプロジェクトだったんですね
浦川一浩
そうだと思います。
登嶋健太さんが「にんげんフェスティバル」に来る前に、原口さんから「登嶋さんという人が『VR旅行』というのをやってるんですけど、東京から来てもらうので旅費がかかりますが、委託金の中でやりませんか?」という話がありました。
登嶋さんは介護施設で働いていて。「コロナ禍で、介護施設にいる寝たきりの方を外に連れ出すことは中々難しいですが、ご自宅を撮影してVRで見てもらったら、その人めちゃめちゃ喜ぶんですよね」と、最初の取っ掛かりはその話でした。これはテクノロジーの発展だなと思いました。ただ動画を流す方法もあるわけですが、VRの方が臨場感があったり、「天井どうなってたかな?」となったら見えるし、そういった直感的で自然な話ができるところが、動画とは違うテクノロジーだと思いました。登嶋さんは「誘導するのではなく、見たいから自然に動く、というというところが良いですね」と言っていました。録画をして見てもらって「近所が見たいよね」となったら「近所を撮影してきますよ」と。結局はテクノロジーを介した中での、アナログなんですよ。これは会話のためのツールとして良いよね、となって。じゃあやりましょうという流れです。
鶴岡章吾 その人の体感に結び付けようという、デジタルだけではない、面白い視点のような気がします。
浦川一浩
最初は、ハワイの映像が見たいとかになるんですよね。でも登嶋さんが言っていたのは、例えば介護をされていて、映像を見せてくれるボランティアさんがいると「あんた、(VR映像の中の) どこおるとね?」と今度はボランティアさんに着目しはじめたりする。そうすると「あんた、どげんしよっとね?」「ありがとうね。」と言いながら、回を重ねるごとに会話するようになっていくんです。
ただ単純にVRを見せるだけではなくて、あなたが来てくれて話せればよい、という関係になったり。上手くテクノロジーを使うと人間性を育んだりするんです。竹本くんが言っていたのは「ボランティアさんと介護の方が一緒になっていれば、介護職員は違うことができて、全てがハッピーになる」と。介護職員としては手がかからなくて、ボランティアさんがそれ面白いよねと横で話してくれれば、助かりますよね。何でも良いんだなと気づかされるんです。それは手品でも良いわけじゃないですか。もう少し協力してもらえれば、介護職員の人たちももっと楽になる、ということに自然に気づかされました。そのための手段のひとつでもあって、すごく面白いなと思います。