ポニポニピープル Dialogue 007 浦川一浩

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わからないのがOK

鶴岡章吾 VR体験をする人だけではなくて、その周りの人にも影響を及ぼすということですね。福祉のVRになったのは、大牟田だからというところはあったのですか?

浦川一浩 原口さんからいつもの長文メールが送られてきて 笑。

鶴岡章吾 いつもの 笑。

浦川一浩 たぶん、僕らがこの地域の課題を解決するツールとして何が良いのか、ということを原口さんはずっと考えていたと思うんですよ。僕らもその話をずっとしているけれど、これどうですかという話をするのは、簡単ではないんです。
その地域のデジタルデバイドといっても、ただスマホを教える人をつくるだけだと持続性がなかったり、だんだん飽きたりする。人間的な尊厳や、コロナ禍での医療機関、介護施設の問題であったり、色んなものが複雑に絡んでいて。でもビジョンとして、こんな付加価値がありますよと上手につくってもらったと思いますね。なので、全部が上がるようにプログラムを一緒にやりました。1年目は基本的に登嶋さんに全部来てもらって、登嶋さんのプログラムを踏襲して我々も見てみました。
大牟田だからというお話については、別に大牟田でなくても登嶋さんはこだわりはなかったと思います。その当時は神戸か忘れてしまいましたが、そこでMetaと協定か何か結ばれたりしたんですよね。

鶴岡章吾 ちょうど「にんげんフェスティバル」の後で。そういった話が出てきて、そうなりそうなんですというお話をされていたと思います。

浦川一浩 そんな感じだったと思います。

鶴岡章吾 登嶋さんとお会いされたのは、どのタイミングだったのでしょうか?

浦川一浩 「にんげんフェスティバル」の時ですね。その後くらいにすぐ講座が始まったんですよ。会ったのは「にんげんフェスティバル」が先だったかな。もしくはその前にここでデモをやった時に1回来てくれたかな。VRとは何ぞやじゃないけど、僕らも体験してみないと、ということで会ったのが先かなと思います。
そこからメンバーを集めたりするのがちょっと大変でした。結局どう告知したらよいか、時間的なものや、誰がよいかというのもなかなか難しくて。1年目は、僕の知り合いの大学生や高専生、あとはデジタルに興味がありそうな人を色々集めてやりました。
そこで気づかされたのが、お年寄りだけ、若者だけのやり方も良いかもしれませんが、VRに関してはごちゃ混ぜにすることがすごく大事。若者も初めて扱うとなると、わからないことを一緒に解決しようとする動きをして、わからないからやってみようという話になって。通常は教える、教えられる側ができますが、それがなくてグループですごく和気あいあいとできて良かったです。

鶴岡章吾 意見を出し合いながら試行錯誤するのは良いですね。年齢や立場に関係なく、同じ目線でできるのも。

浦川一浩 私もわからない、僕もわからないです、というのがスタートなので。通常のワークショップだと、かしこまった話からスタートして声の強い人がいますが、それとは違ってふんわりとした感じでした。
登嶋さんのプログラムの最初の1、2回の中に、仲間づくりがあって「撮影場所をグループで話してください」「どこで撮りますか?」と話し合ってから外に出るのを、わざとやるんですよ。撮影してそれを見て「どこがポイントですか?」と発表してもらって。そこがよくプログラムされているなと思いました。
そしてそれぞれ視点が違うんですよ。そこのイチョウの葉を鳥になった気分でカメラで撮って、その映像を自分たちはこう考えました、と発表すると「おー!でも酔うねーこれは 笑」だったり。いろんな面白いことを考えて撮影しに行っているんですよ。

鶴岡章吾 自分たちで考えて、実際やってみて、それが良かったり悪かったりして、「どうだった?」という思考回路を繰り返しているんですね。

浦川一浩 そこはよくプログラムされているなと思いました。

鶴岡章吾 VRという新しい技術があるからこそ、若い人だったりご年配の方と対等に繋がれる。

浦川一浩 そうですね、そこはあると思います。技術的なことだと、誰か得意な人を中心にスタートしてしまうというのがありますが、フラットにスタートできて。若い人が「僕もVR初めてです」というのはあまりないじゃないですか。

鶴岡章吾 僕が見させていただいた時も、まだVRのヘッドセットの使い方の練習をしている感じでした。ご年配の方たちがお互いに「これどうするとやったっけ?」「こうすっとたい」「こうすっとたい」と教え合いながら。「ちょっと貸してんね」と自分でやってみるけど、出来なくて、「あら、ならんね」と言っていて 笑。

浦川一浩 でもVRだから、皆わからなくても、できなくてもいいじゃないですか 笑。

鶴岡章吾 みんながVRを中心に色んな話をされていたのが、印象的でした。

浦川一浩 他のものだと、できないと恥ずかしいじゃないですか。発言もちゃんとした発言をしないとダメ、という暗黙の空気感がありますが、初めてで、わからないのがOKとなると、安心して失敗も発言もできますね。

鶴岡章吾 そうですね、安心できるのが良いですね。気負わなくていいというか。

浦川一浩 失敗していい、という社会ではないじゃないですか。なんでもかんでも成功ありき、ではないけど、僕らだってわからないと言いたいけど、わからないと言えないような。わからないと言っていい場作りのために、僕らも誰か面白くなさそうにしたり、わからない人をどうサポートして一緒に楽しんでもらうかは結構考えて、どう運営していくかっていうのはすごく気にかけてました。
これもさっきの講座と一緒で、色んなサポートメンバーに来ていただいてですね。登嶋さんだけじゃなくて、松浦さんやポニポニの人にも来てもらって、また一緒に作り上げてもらいました。場も一緒に作っているし、終わったら「今日どうだったか」「誰がどうでした」という反省会を必ずやってました。

鶴岡章吾 サポートメンバーも色んな人たちがいるのが面白いですよね。今は延寿苑(特別養護老人ホーム)の人たちもいますね。

浦川一浩 竹本くんたちは1回目は受講生で、2回目から運営側に変わるということも体験してもらいました。3回目くらいには「大牟田方式」ではないけど、登嶋さんのやり方を見た上で、少しアレンジをやっていきました。
それから、VRのこのプログラムにNTTの研究が乗ってきてですね。それによってどんな変容が起こってるかという研究もしていただいた。そのときはNTTから2、3人来ていただいたりして、またサポートメンバーが増えていました。だからプログラムも変化しているし、常に話し合いながら「こうした方がいい」というのをアジャイルしていきました。

鶴岡章吾 それは去年のお話ですか?

浦川一浩 そうですね。

鶴岡章吾 今年はどうですか?

浦川一浩 今年はですね、僕が現場から離れて、VRのボランティアさんが野田君と一緒に撮影に行ったり、延寿苑に行ってくれたりと継続しています。
新規の人が増えてるわけではないですが、ずっと延寿苑を中心にやっていた活動の場が、サン久福木(特別養護老人ホーム)、たかとりの家(小規模多機能ホーム)など福祉系が増えました。それから公民館の文化祭では4館ぐらい来ていただいて、体験会を開いたり。三池のひょっとこサークルさんは、そこのボランティアの方に伝えて撮影をしてほしい、実際に自分たちも見てみたい、という依頼が入ったり。場が広がっているという感じです。
デジタルやスマホは難しい、ではなくて、VRをやって「こんなのでいいんだ」と思ってもらいたい。VRを体験した人たちは、テクノロジーを楽しんだり学んだら「もうちょっと生活良くなるんじゃない?」「楽しくなるんじゃない?」というきっかけとして、思っていると思います。僕が誘った人たちは、デジタルやスマホが全然わからなくてもボランティアをしてくれて、今も一緒にやってくれています。ボランティアが楽しいとか、VRで撮って見せて会話するのが楽しいという人もいれば、カメラが好きな人、撮影が好きな人もいて。エジプトまで持って行った人がいたり。思考が変わってくるんですよ。苦手でもそれでいいんですよ、と。撮影が好きなら撮影をしてもらって、会話をするときには会話が好きな人が中心に会話すればいい。みんなでやりましょうと。全部をオールラウンドにできないといけないわけでもなく、グループ内でなんとなく役割が決まっていったりしました。

鶴岡章吾 自分はこれをやりたい、できるんだを見つけていくのは良いですよね。

浦川一浩 「ちょっとやってみて。撮影はみんなでやりましょう」と言ったら、みんな「じゃあ一応やってみよう」と。それでも嫌ならやめればいいんです。安全な場で、気づきは僕らもあるし。でも受講生はすごくみんな楽しそうなんですよ。

鶴岡章吾 そこが大事ですよね。技術だけの話になっていくと、だんだん難しくなって手に負えなくなったり、継続しなかったり、楽しくなくなっていってしまったりしますけど、あくまでもそれが一つの手段としてあるだけだと、皆さん自分らしい扱い方や関わり合い方をされていくんですね。

浦川一浩 そうですね。言われた通りですね。役割が何もないとその人は何も進んでいかない。でもこのプログラムでは何もしない人は絶対いないですけどね。

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