ポニポニピープル Dialogue 005 村瀬孝生
(2/7)万策尽きて
菊地玄摩 ポニポニメンバーが村瀬さんにシンパシーを感じているのを僕は日々感じていますが、村瀬さんの側にあるシンパシーの感覚について伺いたいです。
村瀬孝生 そうですね…ポニポニは正確にはなんという名称なんでしたっけ?
菊地玄摩 「一般社団法人大牟田未来共創センター」です。
村瀬孝生
共に、創るということですよね…僕は、感覚的にしかシンパシーを感じているものがなかったんですけど。地域社会の色んなところで綻びが出ていて、今までのシステムでは対応できない限界が来て、そういった綻びにポニポニがいて色んなことをやっている、という感じがあります。
お年寄りの支援をしていった時に、介護保険前も含めて、制度的なシステムの枠外にいた認知症やぼけを抱えた人たちの、その綻びを埋めるような形で「宅老所よりあい」の支援が始まっています。
それでも「よりあい」という組織だけでは対応しきれない人たちがたくさんいて、「よりあい」を利用している人の生活自体も支えきれていないという現実に直面していきます。その時にパンクしちゃうわけですよね。「よりあい」に8時間デイサービスで来て、残りの16時間は在宅をしていて、在宅が破綻すると全部「よりあい」に来てしまう。「よりあい」に泊まる人が多くなって、帰れなくなり住人になってしまうと他の通っている人のケアもままならないんです。
村瀬孝生
16時間を泊まりで支えていくと、自分たちも破綻してしまう。その16時間に支援があれば、泊まる人も少なくなるのではないか、と行き詰まったところで地域のことを考え始めて。「よりあい」に泊まらなくて済むにはどうすればいいか、一人の家庭をどう支えるか、「よりあい」以外の人たちと共に、家族の関係者や、地域の事業所の人たちと、家で過ごすにはどうすればいいかを考えていました。そこに、僕は自由さと可能性を感じたんですよね。
その辺とポニポニは、対象者が違ったとしても、似たようなことをやっているのではないかと。そこは対応しきれなくて大変ですということではなくて、自由を感じたり、同じ世界があるのではないかと、勝手に想像しているんですよね。
菊地玄摩 僕はポニポニと関わるまで「よりあい」や村瀬さんのことを知らなかったのですが、ポニポニメンバーが僕にポニポニのことを伝える際に、村瀬さんを頼りにしていて、村瀬さんの言葉が端々に入っていることをだんだん理解するようになりました。そこに同じ世界があるというか、ポニポニが自らのやっていることに確信を持ちたいときに、村瀬さんの言葉に帰っていくことをしているんだろうと思うようになりました。それで、村瀬さんからはどう見えてるのだろうということが気になっていたんです。同じ世界があって、そこでポニポニと村瀬さんが通じ合っているのを僕も感じていたのではないかと。
村瀬孝生 それはすごく光栄な話だと思います。共創と書いてありますけど、クリエイティブな部分が色んなことで限界を迎えたり、万策尽きた際にも、生活は続いていくじゃないですか。それをなんとか維持しないといけないという中で、ここしかないと思っていたのに、新たなルートを見つけたりする。今までのやり方で万策尽きなければ、そのルートは見えなかったのではないかと思います。今までのやり方がなんとか通じていたあいだは、積極的に行く道じゃないというか。そういった道をポニポニは一生懸命探っているんだろうと思います。
菊地玄摩 本当にそうだなと思います。
村瀬孝生
やっぱり、万策尽きるということが良いんだなと思いますよね。万策尽きるというのは、これ以上のやり方がなくなったということ。これ以上のやり方はなくなったけれども、生活は続くんですね。
それは、すごいアイデアとか、自分の能力が開花してとても素晴らしいアイデアが閃いた、とかではないんですよね。全然そういうことではなくて、もう手の打ちようがなくなって一瞬ぼーっとして、それでも生活が続くので結局ぼーっともしていられないんだけど、一瞬放心するというか、放心してちょっとこう身を任せてみる。実は、自分たちにやり方があるあいだは、そのやり方しか見ていないんですけど、そのやり方が一切通じなくなった時の万策と放心が今度は見えてくるというか、自分たちのやり方しか見ていなかったことに気づく。そういうふうに開けてくる感じなんだろうなと思うんですよね。
自分が創造的に編み出したというより、こうなったらこっちの方でやろうとか、こうなったらこうするしかないじゃんみたいな、選択肢がなくなったからこそ踏み出せる世界があって。それは自分が今までのスキルと知識と経験から編み出したものとはちょっと違う世界ですかね。
菊地玄摩 山内さんともそんなお話をされますか?
村瀬孝生 いや、そういう話をしてたかどうかわからないですけど。山内さんはとにかく面白がってくれてて笑。ポニポニのイベントや企画で色々話をしていくうちに、この辺が面白いんだなと、最近になってわかってきた感じですかね。