ポニポニピープル Dialogue 006 椎原春一

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これからの「動物園」

菊地玄摩 これからやっていきたいこと、期待していることについて伺いたいです。

椎原春一 動物園で言えば、もっとポニポニの活動と関わるようなことを考えていますね。
ただ動物園でポニポニさんのイベントをやる、ポニポニで話をするとかじゃなくて、プロジェクトに動物園のスタッフが参加することで、より良いプロジェクトになるよねということを考え出してやれたら楽しいなと。それをやってみたいですね。

菊地玄摩 それは楽しそうですね。

椎原春一 やっぱり、動物園の動物はある意味で本当の環境から切り離されていて。人間も言葉や文字やインターネットにとらわれすぎちゃったり。食べ物を料理するにしてもそこにあるものを買ってきて作ろうとなりますよね。その前後や先にある環境から切り離されているじゃないですか。なので、そういう切り離された環境の中で生活しているもの同士で何か考える。そのように動物園を考えてみてほしいなと思っていて。お客さんが変わってくれるにはどういう発信をすればいいのかな、どういう取り組みをすればいいのかなと。ポニポニじゃなくても、地域社会の中の一員として、活動したいと思うことを見つけられるといいですね。

菊地玄摩 なるほど。人間の側の事情に向けて、動物園としてより深いコラボレーションができたらということですか。

椎原春一 そうですね。もう少し具体的にいうと、介護施設と保育園とデイサービスと合体したような動物園があると、面白い取り組みができるのかなと思うんです。

菊地玄摩 それはすごいですね。

椎原春一 福祉施設にいるおじいちゃんおばあちゃんたちが動物を見にいきたいと言ったら、庭に出ていくような感じで見に行けたらなと。

菊地玄摩 相互の社会を考えることを超えて、もう相互にミックスしちゃってますね。

椎原春一 移動や感染の問題がありますが…大牟田に帝京大学の医療技術学部があって、作業療法科の先生たちがバーチャルをやっているんです。去年イオンのフードコートで発表されていたものは、バーチャルでうちの動物たちを撮って、ゴーグルをつけて体験するというもので。物理的な問題については、そういうものを活用したいです。バーチャルで飼育員になって食べ物をあげたり、動物に注射したり、止まり木を付ける「飼育員の1日」であったり。そういうものをやりたいです。動物園のイベントでも、動物の食べ物やウンチを見せたり、どんなことに気をつけてるんだよと教えています。
世の中には色んな人がいて職業があって仕事をしている人がいて、それをただ教科書や教室の授業で学ぶのではなくて、実際にその人たちから話を聞くというのは面白いですよね。動物園に限らず、職業案内でバーチャルを活用するのは面白かも知れないですね。最近、職場体験は小学生に人気ですから。

菊地玄摩 なるほど。衛生面で動物と一緒に暮らすことはできないかも知れないけど、技術によって、あちらにもある生活のリアリティを感じることはできそうです。子供が育つときに、おじいちゃんおばあちゃんがいて、動物たちもいて当たり前というのはすごく楽しそうです。

椎原春一 おじいちゃんおばあちゃんたちと小さな子供たちが一緒にいる機会は、最近少しずつ作られているけど、それでも中々ないですよね。

菊地玄摩 そうですね。

椎原春一 私は小学校に上がるまで、おばあちゃんっ子だったので。おばあちゃんにくっついて、近所のおばあちゃんたちの家によく遊びに行ってました。お菓子が出てくるのが楽しみでついて行ってるだけでしたけど笑。

菊地玄摩 なるほど、「飴」が椎原少年の行動を変えたんですね笑。時間がなくなってしまいました。これからが楽しみです。今日はありがとうございました。

椎原春一 ありがとうございました。

おわりに

菊地玄摩 椎原さんとのお話は、いくつもの景色のあいだを、飛び回って進んで行くような体験でした。そこではたくさんの世界が、過去や未来、人や動物であることを超えて、楽しげに共存しているように感じられます。椎原さんの面白がる心が、あらゆるものをつなげ、活き活きとさせているのでしょう。
主役が椎原さん自身であるこのインタビューの収録でさえ、「お前はどんなやつなんだ?どんな世界を生きているんだ?」と、質問者の私をのぞき込んでいる視線を感じます。大牟田市動物園に暮らす動物たちもきっと、それを感じているに違いありません。いつでもそんなやりとりを見に行くことができる大牟田。椎原さんたちが作り上げてきた景色のなかに、ポニポニを再発見することができたように思います。

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