ポニポニピープル Dialogue 008 猿渡春香
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大牟田冨士タクシーの経営者、大牟田た~んとよかとこ協議会の委員として活動してきた猿渡春香さん。大牟田の実業界での経験、トークゲストとして出演した経緯、そしてそこから見えるポニポニについて語っていただきました。
(2025年10月29日収録 / 聞き手・菊地玄摩)
ポニポニピープル
猿渡春香さん
菊地玄摩 大牟田冨士タクシーの取締役副社長はどんなお仕事なのか教えていただけますか?
猿渡春香
皆さんタクシーは見慣れていると思いますが、その業務は意外とご存知ないですよね。
母が社長で、私が副社長をしています。タクシーの業務としては、お客様から電話を受けてタクシーを手配する配車業務、オペレーション業務、それから運転手さんの運行管理、車の整備管理などさまざまです。大量生産をして販売する商品ではなく、その都度依頼を受けながら提供していく流動型のサービスです。ルーティーンのように見えて、運転手さんもお客様も全て人なので、一個一個違うんですよね。私が入社した頃だとまだ無線配車で、運転手さんがマイクを握って話していましたが、今はクラウド型配車サービスを導入しています。ナビゲーションシステムと連動しているので、オペレーターは17歳の人もいるし、運転手さんたちは地元じゃない人もいます。配車データが飛んできて、お客様の迎車場所までナビの誘導が始まるので、誰でもできるような仕事になっています。
そういう中で観光タクシーをやったり、認知症を患って徘徊してしまい行方不明になってしまう方を、タクシー無線を使って捜索する活動に協力しています。
菊地玄摩 大牟田冨士タクシー社が、市と協力して実施する形なのでしょうか?
猿渡春香 そうですね。今は市ですけど、最初は地域の皆さんが主体となり、自分たちの3軒両隣は見守ろうという活動をされていて、警察無線が使えないので、タクシーの無線を使わせてくれないかという申し出があり始まったんです。その当時は、認知症の理解がまだ進んでおらず、家族の方も認知症の家族がいるということを周りに言えなかったり、警察でも捜索が難しいということがありました。
菊地玄摩 「大牟田地区高齢者等SOSネットワーク」のはじまりですね。
猿渡春香 取り組みのスタートは駛馬南校区(現在:駛馬校区)の住民の皆さんですが、その方たちと一緒にやってきて、今ではそれが広がって、認知症に対する理解も進んでいます。
菊地玄摩 なるほど。
猿渡春香 タクシーは大牟田の道路で商売させていただいてるので、地域に対する貢献は誠実に果たしたい。これは先代からの意思で続けております。
菊地玄摩 携帯電話がない時代で、タクシー無線を使う必要があったということですね。いつ頃までさかのぼるのでしょう?
猿渡春香 「はやめ南人情ネットワーク」ができたのは、平成16年くらいじゃないでしょうか。その頃は、認知症の方はまれにいらっしゃるくらいでした。私自身も経験があるのですが、ご家族の方がタクシー料金を支払いに来られた時に、「もう南京錠を買って外から鍵をかけておきたい」と言われたり。困っている様子なので支援したいと思っても、「うちは認知症じゃない」と言われたり。ものすごく昔というわけではないんですけど、認知症に対する理解はここ15年ぐらいで深まった印象です。
菊地玄摩 その当時は現場にいらっしゃったんでしょうか。運転もされていましたか?
猿渡春香 いやいや、私ね、運転はしないんですよ。第二種運転免許は持っていなくて。ただ、オペレーション配車業務は全部します。
菊地玄摩 ああ、そうなんですね。
猿渡春香 はい。当時は行政の関わりも少なくて、認知症になられたお客様にどうしたらいいのかが、ものすごく難しかったんですよ。わからないまま外に出したら行方不明になられて、最悪の場合、もう手遅れだったということもありました。昨日までは「ありがとうございます」と言って車を出していたのに、配車の連絡をいただいても「車が混んでいて出せない」など嘘をつかなければならなかったり。 何と言うんでしょうか、こう…モヤモヤがすごく募るような、そういう時代で。
菊地玄摩 なるほど。
猿渡春香
私自身、どうにかみんなで見守ったら、少しはこの人たちの生活圏が守られるんじゃないかなと思っていたんです。
行政のほうで「安心して徘徊できるまち 大牟田」として、認知症になっても暮らせる街を目指そうという方針が立ち上げられてからは組織が大きくなりましたし、警察が積極的に関わってくれるようになりましたし、医師会、薬剤師会なども入ってきて。ご家族の同意が必要なのですが、今は登録をしておくと、行方不明になったときに顔写真がスマホにデータとして飛んできて、みんなが探しやすくなったりとか。大牟田の人たちは、長くそれがあるのでびっくりしないんですよね。うちの運転手さんたちも市内にいっぱいいるので、もしかして、と思い声をかけて見つかることも日常的にありますね。